新型コロナウィルス対策の「持続化給付金」の対象から性風俗業を外したのは、法の下の平等を定めた憲法に違反するものとして業者が国などを訴えた裁判で、最高裁はこのほど下級審と同様に「合憲」と判断し、業者側の主張を退けました。コロナ給付金に限らず、これまでも性風俗業は様々な税制面で〝廃除〟されてきた過去があります。

反社会的勢力ではないにもかかわらず、「反道徳的である」という理由による職業差別を、最高裁も是認した形になります。

 最高裁は判決で「性風俗業は、規制がなければ未成年者の健全な育成に障害を及ぼす恐れがあると位置づけられている。公費を支出してまで事業を支えることが相当ではないとした判断は、憲法に違反しない」などとして上告を退けました。給付金を性風俗業者に給付しないことが、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種・信条・性別・社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」とする憲法14条には反しないとの判断です。一審判決、二審判決を支持し、これにより事業者側の敗訴が確定しました。

 今回の裁判で争われた「持続化給付金」とは、2020年初頭に感染拡大した新型コロナウィルスで業績が落ち込んだ事業者を対象に、最大200万円を支給した公的支援です。事業が終了するまでに420万超の事業者が受給し、約5.5兆円の税金が支出されました。資金繰りを窮する事業者をスピーディーに支援するため手続きを大幅に簡素化した結果、ダメージを受けていない事業者までも給付金を受け取る不正受給の温床ともなりました。

 しかし、こんな〝ザル〟な給付金でさえも受け取ることができない事業者もいます。それがソープランドやファッションヘルス、ラブホテルといった性風俗業者です。持続化給付金の例外に当たる「不給付要件」では、公共団体、政治団体、宗教団体と並んで「性風俗関連特殊営業」、つまり性風俗業者が挙げられています。キャバクラ、クラブ、ラウンジなどの「風俗業」は給付金対象に含まれる一方、「性風俗業」のみがつまはじきにされた形です。

 持続化給付金だけでなく、コロナ支援策の家賃支援給付金、固定資産税の免除特例でも性風俗業者は除外されています。こうした状況に一部の性風俗業者が声を上げ、司法に訴えたのが2020年9月のこと。法廷で業者側は、「性風俗事業者を公的給付対象外とする根底には、性風俗への誤解や偏見、特定の道徳観がある」として、公的支援から風俗業が除外されるのは憲法で定められた平等に反すると訴えました。

 一審判決では、「客から対価を得て性的好奇心を満たすようなサービスを提供するという性風俗業の特徴は、大多数の国民の道徳意識に反し、国庫からの支出で事業継続を下支えすることは相当ではない」として、国が性風俗業に対して異なる取り扱いをすることには合理的な根拠があると認定。二審判決も、「性の在り方に関する価値観は多様化しているが、性風俗業を公的に認めるのは相当ではないとする考えが失われたわけではない」として、一審判決を支持しました。

 性風俗業が政策的に〝差別〟されるのは今回に始まったことではありません。事業承継税制でも、設備投資減税でも性風俗業は除外されています。しかし性風俗業は、反社会勢力ではありません。開業にあたっては警察に届け出て、その存在を明らかにし、給付金の原資となる税金を納めている事業者です。業種ごと公的支援からつまはじきにすることは、「人種・信条・性別・社会的身分または門地により、政治的、経済的、または社会的関係において、差別されない」とする憲法14条の精神に反するものではないのでしょうか。法を第一に守らせるべき裁判所が、憲法の精神を遵守せず、性風俗産業やそこで働く人々を蔑視、差別する風潮を助長したことは、大きな失望を禁じ得ません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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